歯を失う原因の第1位は歯周病、第2位は虫歯というのは聞いたことがあるかもしれませんが、あまり知られていないのが第3位の歯根破折。歯の根っこが折れてしまう「歯根破折」で歯を失う(=抜く)ことがあるとみなさんはご存知ですか? 歯根破折で起こる症状 歯根破折の一番厄介なところは、初期の段階で分かりにくいところです。目では見えず、レントゲンでも全く異常が見られないことも多いため、初期の段階で見つかることは稀と言っていいでしょう。 1.歯がしみる 神経がある歯の場合、ヒビが大きくなるにつれ、冷たいものや熱いものでしみるようになってきます。そのため知覚過敏と診断されることがよくあります。 2.噛み方によって痛みが強くなる 噛む場所によって痛みが強くなったり、フランスパンやスルメのような、すりつぶさなければ食べられない物のみで痛みを感じる、というような特殊な痛み方をすることがあります。これはヒビが入ったところが、噛み方によって動くことで痛みを感じるからです。 3.歯がヅキヅキする 神経のある歯が破折したところから感染を起こすと、神経が炎症を起こしてヅキヅキ痛み始めます。見た目には異常がないのに激痛を訴えるため、神経痛と診断されてしまうこともあります。 4.歯ぐきが赤く腫れる 破折した歯根の周りが全体的に赤く腫れてきます。この段階になるとようやくレントゲンで破折した状態が確認されるようになります。歯ぐきから膿が出てくることもあります。 5.歯がぐらついてくる 破折がさらに進むと歯がグラグラし、破折片が取れてくることもあります。 こんな人は歯根破折しやすい!歯根破折の原因6つ 1.歯ぎしり・食いしばりの癖がある 睡眠中に歯ぎしりや食いしばりをしている、日中力仕事やスポーツで食いしばることが多い、というような人は歯根破折のリスクが高くなります。 2.神経のない歯がある 神経を取った歯は水分の抜けた枯れ木のように、衝撃に対して弱くなり、割れやすくなります。 3.太い金属の土台が入っている 神経を取った後、歯が薄くなっているところに太い金属の土台が入っている場合、噛むたびにクサビの力が歯根の方向に伝わるため、歯根が割れやすくなります。 4.噛む力が強い 噛む力が強い人は歯が割れるリスクが高いです。特にエラの張った成人男性に多く見られます。 5.硬いものを好んで食べる 硬いものをガリガリとよく食べる人は歯に過剰な負担がかかってしまいます。 6.インプラントが入っている インプラントの噛み合う歯、インプラントの隣の歯は強い力がかかりやすく、歯根破折しやすいことがわかっています。 歯根破折の治療法 歯根破折の治療法はヒビの入り具合によって変わってきます。 1.破折が浅い位置で止まっていればかぶせる治療 破折線が比較的浅い位置で止まっていて、神経が残っている場合には神経を取る処置をした後にかぶせて歯を保存する方向で様子を見ます。 2.真っ二つに割れていれば原則抜歯 歯根の深い位置で割れている場合には、ほとんどの場合抜歯となります。 抜歯を避けるための治療法 基本的に深い位置で割れてしまった歯は抜歯となることがほとんどです。しかし、ケースによっては接着治療や矯正治療を用いて極力歯を抜かない場合もあります。 1.内側から接着剤で修復 口腔内接着法と呼ばれる方法で、内側だけのヒビに限られた初期の破折に対して行われます。ヒビの部分を削り、強力な接着剤で修復します。 2.一度抜いて接着剤でくっつけて戻す 真っ二つに割れている場合で歯がもろく弱っていない場合には、口腔外接着再植法と呼ばれる、一度歯を抜いて強力な接着剤で接着し、抜いた歯をまた元に戻して固定する治療が行われる場合があります。 3.ヒビの下縁まで矯正力で歯を引っ張り上げる ヒビの位置が比較的浅い場合、エクストルージョンと呼ばれる方法で歯を矯正力で引っ張り出してヒビのラインを歯茎の上まで出し、ヒビを取り除いた後、被せ物をします。これにより感染を防ぐことができます。 歯根破折の予防法 歯ぎしり・食いしばり対策 ・日中に食いしばる癖がある場合はやめる 虫歯予防 ・神経を抜くことにならぬよう、虫歯がひどくなる前に歯医者に行く 食事中の注意 ・硬いものをガリガリ噛むことは極力控える 神経を取った後の治療 ・硬い金属の土台を避ける まとめ 歯はもともと丈夫なものですが、過剰な力がかかりすぎるとやはり壊れてしまうものです。歯の破折は中年以降から徐々に増えてきます。それまでの力の蓄積が発現してくるのでしょう。「自分の歯は丈夫だから」と過信して毎日硬いものを噛む習慣がある人は要注意です。歯に力がかかっている自覚のある人は歯科医師と相談し、予防対策をしましょう。 |